2025年10月にオープンした佐賀県嬉野市の温泉街にある「枯淡嬉野」。日本三大美肌の湯を有する温泉旅館としての格と、サウナ目的の宿としても最上級のサウナ体験ができる。温浴の全てを滞在しながら味わえる絶品の旅館をご紹介しよう。
今回、2026年2月上旬に実際に宿泊し、最上級クラスのサウナ付き客室まで体験してきた。ここは単に“温泉が良い”とか“サウナが付いている”ような設備レベルの話では語りきれない。嬉野という歴史ある温泉街に佇みながら、和の美意識、繊細な建築デザイン、食事の完成度までを一つの旅の物語のように綴る極上の宿だ。
嬉野の最新宿に浸かっていこう。
Contents
【アクセス】掘れば温泉が沸く温泉街「嬉野」|嬉野ICから車で5分
福岡方面から車で嬉野へ向かう。嬉野ICから高速を降りて5分ほど車を走らせると、温泉街らしい街並みになってくる。
宿に近づくにつれ、観光地として整えられた大温泉地というより、もっと生活に近い温泉街の気配が濃くなってきた。到着してまず感じたのは、やはりこの町らしいローカル感だ。
各所に足湯が点在していて、しかも一つ二つではない。あちこちに湯気が上がっている。そして、足湯に導かれた夫婦や家族の笑顔が湯気の中に浮かぶ。桃源郷のような光景が旅情感を掻き立てる。
街の雰囲気から、自然と速度を落として車を走らせていた。昔ながらのスナック、老舗の居酒屋、温泉街らしい土産店、大小の旅館。決して大規模ではないが、その分だけ古き良き街の輪郭が濃い。小ぶりな温泉街ならではの風情がたまらない。綺麗で大型のサウナより、スパ銭系のサウナの方が落ち着くようなそんな感覚に近い。
いかにも観光地然とした派手さではなく、日常と観光のあいだにあるような温泉街。その素朴さが嬉野の魅力だと街を車で通るだけでも分かった。
その町の中、住宅街の延長にふっと現れるのが枯淡嬉野だ。周囲の空気感に溶け込みながらも、高い木々と暖簾、高級割烹のような品格、ここだけ別世界の密度をまとっている。目立ちすぎない知る人ぞ知る感がたまらない。駐車場には、高級車がちらほら。その景色を見ただけで、この宿がただの和風旅館ではないことがひしひし伝わってくる。
【館内】動く壁から始まる非日常。枯淡嬉野という別世界
暖簾の上で、佐賀県の形をベースに形成された「枯淡嬉野」のロゴが揺らぐ。
暖簾をくぐってエントランスまで向かうと、行き止まり。入り口というより「壁」という方がしっくりくる入口らしい場所に立つと、大壁が自動で開いた。これはいい。本棚がドアになっているような、おしゃれなレストランを思い出す。
普通のドアではなく、壁ごと開く大胆なエントランスは、まさに異世界に来た感覚を刺激してくれる。非日常の扉が開くワクワク感が入口から入念にデザインされていたのだ。
中に入ると、そこには非常に質の高い“和”が広がっていた。盆栽、土の壁、椅子から中庭を望む大窓、置かれている調度品に至るまで。いわゆる流行の和モダンという言葉で簡単に括れない、上質な和を具現化したような空間だ。
おそらく置いてあるもの一つひとつも上質(高価)なのだろうと自然に思わせる説得力があった。
宿の血管は天然温泉。シャワー・暖房も全室嬉野温泉
チェックインから客室に案内されても、館内中がとても暖かいことに気づいた。冬の旅館なので暖かいのは当然とも言えるが、その“暖かさの質”がどこか柔らかい。そこで聞いて驚いたのが、館内の空調に温泉そのものを使っているという話だ。
仕組みとしては、館内や各部屋にパイプを張り巡らせ、加水していない熱い源泉を循環させることで室内を暖めているという。つまり、ガスや一般的な暖房だけに頼るのではなく、温泉そのものの熱を暖房として活かしているわけだ。
これは嬉野ならではの贅沢の極み。見た目に派手な設備ではないけれど、目に見えない部分まで温泉で包む配慮に、この宿の本物感が漂う。
シャワーからも天然温泉。客室から“温泉づくし”の滞在
今回1泊目に利用したのはツインタイプの客室だが、まず感心したのは、シャワーから温泉が出ること。これは、かなりデカイ。客室風呂が温泉という宿はあるが、シャワーまで温泉というのは、滞在中の満足度がまるで違う。体を洗う作業も、髪を流す時間も、すべてが嬉野の湯に触れる温泉体験になる。
嬉野の湯といえば、とろとろ、つるつる、ぬるぬる。日本三大 美肌の湯として知られているが、本当に足元が滑るほどの質感がある。滞在中はその湯をとにかく味わい尽くしたくなる。温泉シャワーは、100点だ。
サウナ付き客室史上最高クラス「インペリアルサウナテラススイート 碧」
2日目に体験させてもらった最上級客室は、とにかく広い123平米。最大4人用の部屋だが、仮に家族で泊まれた場合、3家族ぐらいいてもゆったりできる広さだ。
もしお子さんが数名いても窮屈さを感じないだろうし、逆に2人で使えば、新婚旅行レベルの贅沢な空間といえる。
巨大スクリーンと大窓を備えた、最上級客室のリビング
この部屋でまず目に入るのが、リビングのど真ん中にある大型スクリーンだ。YouTubeはもちろん、Netflixなどのサブスク配信のアカウントがあれば、映像コンテンツを存分に楽しめる。
照明を調整すれば、本当にプライベートシアターのような空間にもカスタムできてしまう。旅館の客室というより、上質なシアタールーム付きの別荘に滞在しているような感覚になった。仕事仲間の連れから出る言葉は、「すげー…すげー…」。驚きすぎてボキャブラリーが壊滅していた。サプライズにも使える素晴らしい客室だと身をもって感じた。
そしてスクリーンに向かって右手側には、スクリーンにも勝るとも劣らない大きな窓がある。外の景色は、春には梅、冬には雪景色も見えるという抜けの良い大窓だ。枠付きの大窓によって、外の風景そのものをインテリアとして部屋の中に引き込んでいる。風景を絵画に昇華するようなデザインにうっとりしていると、隣からまた「すげー…」。ボキャブラリーが戻ってこない圧巻の内観に、もはや笑いすら出てきた。
後からこの窓の先が、この部屋の物語のオーラスになるのを知ってさすがに筆者の私も「すげー」が出てしまった。
屋内に洞窟サウナが出現。プライベートサウナエリア
この客室の真骨頂は、リビングの先にある。ソファの背後に壁のようにも、戸のようにも見える重厚な仕切りがあるのだが、「自動」と書かれたボタンを押すと、これまた壁が開く。
目の前には室内に背の高い岩壁が出現。部屋の中に、洞窟のような建築が出てきて……正直、入室から驚かされ続けて、リアクションを休む暇がない。屋内なのに、まるで屋外の石畳や洞窟のような重厚な壁面が立ち上がっている。見た瞬間に写真や動画を撮りたくなる。それほどルックに力がある。
サウナ付き客室は最近増えているが、その多くは“客室の中にボックス型の小さな個室がある”という設計だ。しかしここは全く違う。屋外にあるべきようなサウナ空間を、屋内に取り込んでしまった。
しかも、ただインパクトを狙っただけではない。リビングと浴室、サウナ空間の境界をあえて曖昧にして、最も長く滞在する空間そのものを最も非日常にしているのだ。施設のサービス精神が嬉野温泉ぐらい沸いている。
洞窟サウナにウッドベッドの安らぎ。METOS製高温ストーブが本格サウナをキープ
この客室サウナには、METOS製のストーブが採用されていて、サウナとしての芯がしっかりしている。
入ってみると、しっかり高温を感じつつ、2つのウッドベッドがストーブに向かって足を出すように並んでいる。美しい、上品で大人なサウナだ。これは初めてみる形だった。岩の中にここまで上質なサウナ空間が出てくるとは、いい意味で裏切られた。
座って体を預けると、足先から全身へまんべんなく温度が回っていく。リクライニング気味に身を預けられる座面は、全身をくまなく熱に包んでいくようなつくりになっていた。
外観はごつごつした岩壁で、まるで溶岩のような迫力があるが、中に入ると印象は変わる。むしろ温かみがあって、落ち着きがあり、スタイリッシュでリッチだ。
特にカップルや夫婦で使うとたまらないだろう。セクシーというか、もはやダンディと言ってもいいサウナエリアだ。静かながら高揚感のある空間は、お忍びで芸能人も訪れそうだ。
セルフロウリュで仕上げる半寝サウナ体験
もちろんセルフロウリュもできる。サウナ付き客室の欠点は、ストーブが小さく、故障の原因になるため、セルフロウリュの回数が超限定的であることが挙げられる。
しかしここは、150㎝はある円柱のサウナストーブのため、故障にも強い。普通は街の大衆サウナ室に使われるようなサイズだ。サウナステイに没頭できる頼もしい設備なのも高評価である。
水風呂、半露天風呂、庭園を望むウッドデッキも貸切
サウナを出て左手には屋外が開けた半露天空間が開放的だ。スムーズな動線にニンマリしながら、水風呂へ。
そのさらに先には露天風呂がある。もちろんこれも嬉野温泉だ。そして窓を開けると、この客室専用のデッキへ出られる。バスローブを羽織って外へ出ると、先ほど室内から見えていたととのい椅子がある。
ちょうど滞在時は梅の花が咲いていて、庭を見下ろしながら風を浴びることができた。自然のテラスを貸切るような特等席感が最高だ。客室に付属したデッキというだけではなく、外からも見えないプライベートさと開放感が同居していて、サウナ後の外気浴のためにきちんと設計された場所である。
ちなみに、このデッキで整っている姿が室内からも見えるのだ。最初に驚いたあの大窓が椅子の背後にある。中から見てもととのっている様子が絵になる。参加型のインテリアと言おうか、家族やパートナーがととのっている様子が、視覚的に美しく、思い出のデザインになる。この視線設計まで含めて、サウナの導線も美しすぎる。
最後は露天風呂へ戻る。サウナ、水風呂、外気、そして嬉野温泉。この流れはもう極上の一言。洞窟サウナでしっとり汗を流し、四季の外気に触れ、最後に嬉野の湯で体を労る。嬉野の高いpHのとろりとした湯が、サウナ後にデトックスされた肌へ、染み渡り、まるで天然の化粧水のように仕上げてくれる。
“枯れたものを淡くしていく”という枯淡という語源とは異なる意味だが、気付けば、ポジティブに意味を解釈したくなる温かい気持ちになっていた。
客室にあるお茶も嬉野茶だ。入館時の一杯ももちろん美味しい。サウナ後の一杯もいい。サウナで冴え渡る味覚に格別のお茶体験になる。そしてくつろげるエリアもしっかりと充実している。
サウナやスクリーンを核に、極上の安らぎを過ごせる「インペリアルサウナテラススイート碧」。生涯に少なくとも一度は、大切な人と泊まってほしい部屋だ。
【大浴場・サウナ・露天風呂】スイートルーム以外でも男女大浴場に温泉とセルフロウリュサウナを完備
この宿の良さは、客室露天風呂や客室サウナだけで完結しない。今回1泊目に泊まったサウナの無いツインルームからも、大浴場のサウナをしっかり楽しむことができた。
大浴場は男女ともにサウナと天然温泉の露天風呂を備えている。さらに朝晩で男女入替制が嬉しい。翌朝にもう片側も体験できるのだ。
どちらの浴室も露天風呂の雰囲気がいい。内湯を浸かっていく動線や、階段から露天風呂に浸かっていく造りなども、温泉がまさに溢れ出しているような贅沢な感覚になれる。
庭の木々を眺めながら楽しめる温泉は、「日本三大 美肌の湯」の一つ。ナトリウムを豊富に含むといわれる「炭酸水素塩泉」のおかげで、とろとろな肌触りを感じられ、さらに実際に角質をやわらげて、肌をなめらかに仕上げてくれる効果がるといわれる。
ちなみに、本当に温泉で溢れているので、床までとろとろ美人なので転倒には十分ご注意を。
男女とも高温2段の本格サウナ
そしてサウナはどちらもセルフロウリュ対応。こちらもMETOS製の大型ストーブが入っていて、温度感はしっかり高温だ。さらに2段の段差で体感できる温度も選べる。温泉旅館のサウナというと、あくまで付帯設備として軽めのこともあるが、ここは単体のサウナ施設級の満足度があった。
窓がある開放感もストレス発散に寄与してくれる。爽やかなサウナをしながら、その後の温泉も待ち遠しくなる憎い設計だ。
水風呂・内気浴・外気浴は浴室ごとにアレンジ
片側の浴室には、浴室内にデッキのような内気浴スペースがあり、そこにインフィニティチェアが置かれている。寒い時期や雪の時期、あるいは花粉のシーズンなど、外気浴が少しつらい時でも浴室内でゆっくりととのえるし、足場をウッドデッキしているのは温かみも感じられていい。
水風呂は、露天にある壺湯タイプの水風呂と、内湯にある深いタイプと、朝晩変わるのも楽しみがあっていい。露天の方は、バスタブのような壺なので大浴場でもプライベートな水風呂体験ができ、そのままクールダウンできるのが爽快だ。
もう一方の浴室は、水風呂はかなり深く、少し登って入っていくようなつくりで、これがまた良い。
さらにこちらは、サウナと水風呂の後、露天へ向かう際に温泉の横を抜けていくような動線になっていて、その先に外気浴デッキがある。高い木々や花を眺めながら、インフィニティチェアで風を浴びる時間は格別だ。少し高い位置から庭を眺めるような感覚があり、季節の移ろいを感じながらリラックスできる。
どの客室に泊まっても、男女ともに天然温泉とサウナ、そして露天風呂、内気浴、外気浴までしっかり堪能できる。このバランスの良さは、旅館としても希少で貴重だ。
【夕食・朝食】嬉野と佐賀の素材の美味を堪能
サウナと温泉だけでも十分魅力的だが、食事も隙がない。今回いただいたのはコース仕立ての夕食。前菜から魚、肉、締めに至るまで、一つひとつ丁寧で、地元佐賀県の素材をベースにした旨味と新鮮さがビシバシ伝わってくる。
夕食のコースで特に良かったのが、嬉野茶をイメージした抹茶仕立てのしゃぶしゃぶだ。抹茶の香りとちょうどいいお出汁の塩味、とにかく味のバランスが絶妙で上品。そしてメインの佐賀牛は、サシと赤みのバランスがよく、特製の豆乳抹茶しゃぶしゃぶをすれば、肉の甘みがより際立ってくる。とろける食感に加え、抹茶が脂を爽やかにしてくれるから、親や祖父母を連れてきても美味しく完食できる想像ができた。
佐賀牛は、とにかく美味かった。地元のクラフトビールも進むし、刺身の前菜には、日本酒の飲み比べがおすすめだ。料理としての完成度が高すぎるのに派手すぎず、優しい贅沢という印象だった。
食事の時間そのものも実は美しい。席からは庭が抜けて見え、水が流れ、夜になるとライトアップされた庭が静かに浮かび上がる。カップルや夫婦には特に刺さる目線の設計だ。横並びの席もまた2人にはいい。
仕事仲間と二人で訪れた今回でも十分に良かったのだから、これが大切な人との時間だったら、なおさら濃い時間になるはずだ。
湯葉と佐賀米で嬉しい朝
朝食で、特に印象に残ったのは湯葉である。嬉野の「福豊か」を使った湯葉や豆腐を、火を入れながら料理をするように楽しめる。ポン酢だけで食べても素材が抜群に美味しい。ここまで甘くて濃厚な湯葉は初めて食べた。
お米も美味しかった。土鍋でふっくら炊き上げた佐賀米は見事の一言。米がうまければもう食事として90点以上取れている。朝食全体の満足度を底上げする佐賀米は、焼き鮭、出し茶漬け、全てを完璧に仕上げてくれた。
朝から嬉野らしい湯葉を自分たちで火を入れながら味わえるのも楽しく、ただ豪華なだけではなく、朝の時間を丁寧に過ごさせてくれる内容になっていた。
オールインクルーシブのお茶と酒、時を愛でるラウンジ体験
この宿では食事以外の部分でも、お茶と酒を楽しめるさらにオールインクルーシブなのだ。エントランスではウェルカムドリンクとしてお茶を8種類以上も味わえ、美味しい淹れ方まできちんと案内がある。
お風呂や外出の移動で通るラウンジで、ほっと一息つけるのはありがたい。
チェックインからビールやハイボールなども飲み放題。プランによってはVIPルームのような別のラウンジも利用可能で、暖炉を眺めながら、軽食と合わせてアップグレードされた空間を味わえる。
通常プランでも、お茶を入れながら、お酒を飲みながら、ただゆっくり時間を過ごすことができる。コミュニケーションが充実するラウンジだ。ラウンジをはじめ、滞在中は時を忘れるというより、時そのものを味わう感覚に近かった。ここで流れているのは、ただの宿泊時間ではない。時を味わう枯淡嬉野時間なのだろう。
大切な人と大切な時を過ごす宿「嬉野温泉 枯淡嬉野」
この宿で強く感じたのは、「次は誰を連れてきたいか」が自然に浮かぶことだった。家族や、パートナー。わいわい語らう仲間もいいが、身近にいる大切な人と、特別な時間を過ごしたくなる。特に今回紹介したサウナ付きスイートルームはそうだ。
料金・営業時間|施設情報
| 施設名 | 嬉野温泉 枯淡嬉野 |
|---|---|
| 住所 | 〒843-0301 佐賀県嬉野市嬉野町大字下宿乙 2314 |
| 客室数 | 全18室 |
| 温浴設備 | 大浴場、サウナ |
| チェックイン・チェックアウト | 15:00|11:00 |
| 料金 | ツインルーム: |
| 公式サイト | https://goten-resort.jp/kotan-ureshino/ |
枯淡嬉野は、温泉旅館であり、サウナ宿であり、食の宿でもある。ただ、それ以上に強く感じたのは、“時を味わう宿”だということだった。
“淡く枯れる”と書く枯淡。本来の意味は違うが、文字面と滞在の経験から、自分の中に溜まった疲れや、少しずつ乾いてしまった感覚、枯れ続け、確かに老いていく時間をゆっくりなだらかにしていくような感覚だった。
時間をすぎるものではなく、淡く美しくそして濃くしていくほどの滞在だった。若返る、という言い方も大げさではない。少なくとも、肌も気分も、確かに生き返る。
嬉野で温泉旅館を選ぶなら、サウナまで含めてしっかり味わいたい。そんな人にはかなり強くすすめたい最上級旅館であり、サウナ宿だ。
執筆:スパワークス編集長 山野 隼