佐賀・奥武雄温泉「風の森」宿泊記。森の中に現れる「鏡のサウナ」と、2人専用の離れで過ごす露天風呂付き客室

佐賀・奥武雄温泉にある「風の森」は、サウナと温泉を堪能できる2人専用の森の宿だ。

武雄らしい森、緑に包まれるモダンでウッディなエントランスは、まるで美術館のよう。いい意味で温泉やサウナのような雰囲気がなく、森の中のリゾートという印象だ。

この宿で外せないのが、宿泊者限定で楽しめる貸切サウナだ。しかも普通のサウナではない。世界でも珍しい“鏡のサウナ”がある。これは、サウナ好きなら一度は訪れたい。このサウナに行ったというだけで少々自慢になるスポットである。

詳しく紹介していこう。

カートで山を登るサウナへの動線。非日常のアクティビティで始まる貸切サウナ

風の森 エントランス

屋内の受付の後、なぜか、また外に案内される。宿が周りに見当たらないが、それもそのはず。サウナも宿も受付よりもさらに山の上、森の中にあるからだ。

そしてサウナまでは、なんとカートで移動する。ゴルフカートのように揺られて山道を登っていくのだ。海のあるリゾートや海外ではよくあるカートでの移動だが、山道をカートで登っていくのはゴルフ以外では初めてかもしれない。

サウナへ向かう移動手段自体がアクティビティ化していて、もう楽しい。

自分で運転してきた車ではなく、誰かが運転する宿専用カートに乗って案内される体験は一気に非日常モードに切り替えられる。エリア内の移動一つさえも、ロケーションに合わせた独自のサービスにしてしまうところに、おもてなしの精神を感じた。山道を登る流れに合わせて気分も上がっていった。

山を登っていくに連れて、緑が深くなっていく。まるでジブリ映画の導入部分にありそうな雰囲気だ。ここから何が始まるのか、自然と期待が高まる。

【カガミノサウナ】森の中に現れる近未来造形!? 世界でも希少な鏡のプライベートサウナ

カート道の途中、森の奥にメタリックな物体が見えてくる。森の中に銀色の何かがあり、周囲の山や木々が、その物体の表面に映り込み、まるで森そのものが隆起して動いているようにも見える。

案内されるがままに階段を降りていくと、鏡に覆われたキューブ型の建物が現れる。

これがサウナらしい。「マジか」、ついつい童心に帰ってしまう。この時点で、完全に心を掴まれた。サウナの差別化は、サウナ室内の造形や、温度やサービスなどに依存しがちだが、森の中に鏡を使ってプライベートサウナを建てる手法は他に聞いたことがない。

鏡の扉を開けて、不思議なサウナに入っていこう。

宿泊者限定“鏡のサウナ”

入口へ向かう階段から鏡らしさが炸裂している。自分たちが下りている階段が、外観の鏡に映り込み、まるでその先にもずっと階段が続いているように見える。

壁も、入口も、扉も、すべて鏡。

森の景色が映り込み、どこまでが建物で、どこからが森なのか、一瞬わからなくなる。完全に初体験の異世界だ。何度も言うがこれがサウナとは少々信じがたい……。

SNS時代にここまで撮り甲斐のある、映えるサウナはなかなかないだろう。もはや映えるという次元ではなく、これはもうアートだ。1点、難しいのは撮影者が鏡に入ってしまうこと。鏡なので、逃げ場がないことだけが贅沢な悩みだ。

森が無限大になるカガミノサウナ

鏡のサウナのすごいところは、自然の緑、空を遮っているようで広げていることだ。

普通、建物を森の中に建てると、窓以外はどうしても人工物として景色と断絶してしまう。けれど、このサウナは鏡で森を鏡に映すことで、むしろ自然を増幅している。森、空、ウッドデッキ、自分たちの姿まで鏡の中に奥行きが出る。むしろ、鏡があることで森が広がって見える。

とにかく面白い。感動と驚きが止まらない。本当に唯一無二のサウナだ。視界の端にも緑があり、背後にも緑があり、前にも緑がある。どこを向いても森になる、自然を活かした秀逸なデザインといえる。

正直、サウナ名を見た時に出落ち感が強いハリボテのサウナかなと思ったが、実際には精密に作られた自然と融合するアートレベルのサウナだった。

鏡の戸の奥にある、森へ飛び出すサウナ室

サウナエリアに入ると、まずウッドデッキが迎えてくれる。両脇には鏡の壁。正面には鏡ではなく、本物の森が広がっている。

ここが、水風呂と外気浴のエリアだ。まるで森に突き出した展望デッキのような場所で、緑に囲まれているというより、緑の中に浮いているような感覚がある。シャワーで身体を流し、いよいよサウナ室へ向かう。

ただ、どこが入口なのか一瞬わからない。鏡の壁の一部に扉があり、その鏡のドアを開けると、奥にサウナ室が現れる。この演出がまたいい。

鏡の壁を開けたら、サウナがある。秘密基地感というか、隠し部屋感というか、男心も女心もくすぐる動線だ。

寝サウナで森にどっぷり浸る。2人で森を貸切るプライベートサウナ

鏡の扉を開けると、ガラス張りの大窓がドーンと、その先に森がまた広がる。しかも地面は目線よりかなり下にあるから森の中に浮遊しているようにも感じる。

鏡のサウナの中にあるサウナ室が、さらに森へ飛び出していくような超開放的な構造になっているのだ。外観の驚き以上に、満足度がぐっと上がった。

やっぱり生の森はいい。座面が背もたれになる傾斜があって、ちょっとした寝サウナができるつくりになっている。いわゆるウッドベッドのような座面で、背中を預けながら、リラックスした姿勢をキープする。

2段の座面は高さもあり、腰の位置くらいまで寝サウナエリアに上がっていく高低差のため、横になりながら熱もしっかり受けられる。

本格METOSストーブにセルフロウリュ

鏡の外観、森に浮くデッキ、寝サウナ。これだけで十分に個性と満足度があるが、セルフロウリュもちゃんとできる。セルフロウリュをすると、寝サウナの体勢でもしっかり蒸気が回って、快感が降ってくる。

大窓があるサウナは温度が下がりがちだが、しっかりと高温な上、座面も高く、そしてセルフロウリュで熱と湿度をカスタムできたら、もう言うことはない。

夜の様子

男同士できてしまったが、そんなことがどうでもよくなるぐらいサウナが気持ち良すぎた。自然に溶ける森のサウナはやっぱりアウトドアサウナ体験として良すぎる。

サウナエリアにセルフ製氷器。氷で爽快なプライベート水風呂

水風呂はバスタブ型。一人ずつゆっくり浸かるタイプだ。

最初からずっと気になっていた大きな機材、よく見ると「HOSHIZAKI」のロゴ。そう、製氷器だ。贅沢にも水風呂用に、業務用クラスの巨大な製氷器が設置されている。

ドリンクを冷やすわけでもなく、紛れもなく自分達をキンキンにするための設備だ。サウナに本気すぎる……。好きなタイミングで氷を追加できるから、サウナ前に入れて10度未満のシングルレベルまで冷やすのもよし、入る直前にちょっとアクセントで入れるもよし。

夏場なんかは特にたまらない。水温はサウナを繰り返せば上がってしまうので、毎回新鮮な出来立ての水風呂に入っている感覚がお世辞抜きに最高だった。

氷付きのサービスを超える製氷器付きプライベートサウナ。サウナイキタイにもチェック項目がない最強のオーバースペックが最高だ。

インフィニティチェアから森が無限に広がる外気浴デッキ

サウナ、水風呂、外気浴が鏡と森に囲まれた1つのエリアで完結している。

鏡のサウナの前に森の中にある大自然のサウナだ。もちろんデッキはウッドタイプ。自然へのこだわりを足元からも感じられる。さすがの統一感である。

インフィニティチェアに腰掛けて、空を仰げば、カガミノサウナの中でも一番美しい景色が広がる。建物よりも高い木々の緑が、鏡の上に覆い被さるように伸びている。

その様子が両脇の鏡に投影されて、どこが本物の自然なのかわからなくなる。森の景色がここでも無限に広がる。

自然の中にいるのに、さらに自然が増えて、ととのいの感覚も合間って森に浮遊しているような錯覚になる。これは一度体験する価値がある。鏡そのものや、どこに鏡を置くのかが精巧に計算されているからこそ、違和感や気持ち悪さもなく、ボーダレスな自然の空間を実現できているのだろう。

このサウナは本当に一生に一度はぜひ訪れて欲しい。まさに体験とアートの融合、わざわざ行く価値のある逸品だ。

サウナの余韻を広げる森のラウンジ「Slow Minutes」

サウナを終えたあとに立ち寄ったのが、風の森のラウンジ「Slow Minutes」。

ここがまた素敵だった。

鏡のサウナで熱を浴び、水風呂で冷やされ、外気浴で森に溶けたあと、直ぐに客室へ戻るのではなく、森の中のラウンジで少しだけ時間をほどく。この“つなぎ”があることで、風の森での滞在は一気に深くなる。

屋内にはデザイン性の高い家具が並び、同じ椅子ばかりを揃えた無機質な空間ではなく、一つひとつが選ばれ抜かれたものだ。

椅子も、テーブルも、照明も、同じものなく、少しずつ形状が違う。

でも空間全体としてはきちんとまとまっている。まさに同じもの一つとない森のようだ。

さらに、大きな窓の外にはウッドデッキと緑の景色。戸を閉めていても外の景色が抜けているから、屋内にいても閉塞感がなく、どんな季節でも開放感を残しながら屋内でくつろげる。

バーテンダーのいない森のバー

このラウンジでは、コーヒーや紅茶を無料で楽しめる。

アルコールなどの有料商品は、その場で無人決済で料金を支払うシステムだ。豊富なお酒が並ぶ空間は、バーテンダーがいてもまったくおかしくないぐらいオシャレ。

むしろ、カウンターに誰かが立っていそうな設えだ。でも、ここにはあえてバーテンダーをおいていない。誰かに作ってもらうのではなく、自分たちで好きなドリンクを選び、必要なら少しカスタムし、自分たちだけで乾杯する。サウナ後の余韻を自分たちに委ねられている感じが、風の森らしい。

ちなみに取材情報では、社長のこだわりで、かっこいいバーテンダーに嫉妬してしまう男性の気持ちまで考えて、穏やかに過ごせるように無人にしているとのことだ。

確かに、男心は時に風のように繊細で時に大木のように頑なだ。女性といる時は、特に筆者は自然体でいるのは困難だ。

常に心が穏やかに揺さぶられない時間だからこそ、2人の関係が自然と親密になっていくのかもしれない。細かいシチュエーションまで考え抜かれた気配りがあるからこそ、本当の休息ができる。見えない社長に男性陣は守られている安心安全の風の森だ。

接客で埋め尽くすのではなく、余白を残す。その余白を2人で使う。さすが社長、実に粋な気遣いだ。

気分に合わせて、屋内でも外でもくつろげる。風のように自由な形で時間を過ごせる2人のバー。休日の質がラウンジ一つでまるで違う。サウナと客室をつなぐ場所としても、風のようにスムーズで、軽やかなラウンジだった。

【客室】全11棟、それぞれが一棟貸し。5,000平米の森に点在する2人専用の離れ

風の森の宿泊棟は、全11棟。約5,000平米の広い森の敷地の中に、それぞれの客室が独立して点在している。

ホテルのように廊下に部屋が並んでいるのではなく、他の宿泊者から距離をとった一棟ごとの離れになっているのが嬉しい。

お忍びで来てもいいように、記念日で来ても他者との接触が少なく安心感が高い。ただ静かに2人で休みたい時にも最適だ。森の静けさを、離れが邪魔しない。

全室に天然温泉の露天風呂。美容液のような奥武雄温泉を部屋で貸切

風の森の客室で何より素晴らしいのが、全室に天然温泉の露天風呂が付いていることだ。

しかも、ただ露天風呂があるだけではない。屋外のウッドデッキ温泉があるのだ。

どの部屋も、ふらっと外に出たくなるような森を眺められる広いウッドデッキを備え、そこに自分たち専用の露天風呂がある。いつでも、誰にも気を使わず、好きなタイミングで温泉に入れる。もちろん裸で周りを気にせずに堪能できる。

泉質は、ナトリウム炭酸水素塩泉、いわゆる純重曹泉。

とろとろした肌触りが特徴で、奥武雄温泉らしいまさに美容液のような温泉だった。佐賀は美容の県とも言われるが、ここで入る温泉は、その言葉がしっくりくる。

肌にまとわりつくようなやわらかさがあり、湯上がりのしっとり感も特別だ。サウナで汗をかいて外気でぼーっとした後、感想しがちな肌に天然の美容液がしみる。客室に戻ってこの温泉を貸し切れるのは、贅沢極まりない。

内湯、デッキ、ワークスペースまで整う客室

客室には露天風呂だけでなく、内湯もしっかりある。

しかも、内湯にも外が見える窓が付いている。露天風呂はもちろん気持ちいいが、季節や時間帯によっては内湯でゆっくりしたい時もある。そんな時でも、閉じた浴室にならず、外の気配を感じられるのはありがたい。

さらに、一人用のワークスペースのような場所もあり、滞在中でもどうしても少し仕事をしなければならない状況はあるだろう。そんな時に本当に助かる空間である。しかも、集中できる空間設計だから、ワーケーションとしても使えるだろう。

もちろん、読書をしたり、朝コーヒーを片手に資料を見たりする時間にもいい場所だ。

“2人専用”ではあるが、ずっと2人で向き合い続けるだけではない。それぞれが少しだけ一人一人の時間を持てるような余白まである。このバランスがよくできていた。

ただの森の宿ではなく、とても現代のライフスタイルにフィットした非日常空間だった。

モダンで明るい、自然をインテリアにした客室デザイン

客室の印象は、とても明るい。ものすごくギラギラしたラグジュアリーというわけではない。でも、きちんと洗練されている。森の中のかわいらしさと、現代的なモダンさ。そこに温泉地らしい露天風呂の本格感が加わっている。

窓の配置、デッキのつながり、露天風呂の場所、内湯からの景色。すべてが“森をどう感じるか”を考えて設計されているように感じた。

風の森という名前そのままに、風が通り、目線に森が抜け、光が入ったインテリアが美しい。高級感はある。でも肩肘張らない森の宿らしい自然さが、とても過ごしやすい。

風の森でしか味わえない、クリエイティブで唯一無二な温泉・サウナステイ

奥武雄温泉「風の森」の鏡のサウナは、まさしく唯一無二だった。

カートで山を登る導入、森の中に現れる鏡が作る圧倒的な非日常空間、ガラス張りの寝サウナに、森が無限に広がる外気浴デッキ。ラウンジから全室露天風呂付きの森の宿まで、すべてが風が流れるように繋がっている。

今回は仕事仲間であり親友と泊まったが、大切な人と、いつもと温泉宿、サウナステイをしたい人にはおすすめだ。佐賀の森の奥、鏡で広がる無限のととのいと、プライベートな宿泊をぜひ。

GOTENリゾートが手がける次の森リゾート「奥嬉野 MUMEIDAKI(無名滝)」

風の森の滞在を味わうと、同じGOTENリゾートが手がける次の宿にも期待したくなる。

それが、佐賀県・奥嬉野に誕生予定の「MUMEIDAKI(無名滝)」だ。

風の森が“森にこもる二人の宿”なら、無名滝は“滝と水に包まれる奥嬉野の宿”という印象。コンセプトは「水が生まれる場所」。深い緑と岩肌、その奥に流れる滝を望むロケーションで、風の森とはまた違う“自然に入り込む滞在”が楽しめそうだ。

客室は、116㎡のスイートから232㎡のラグジュアリースイートまで用意され、窓やテラスから滝と森を取り込む設計。風の森の鏡のサウナが“森を無限に広げる体験”なら、無名滝は“滝を客室の一部にする体験”になりそうだ。

食事では佐賀の山、海、水の恵みを活かし、有田焼や吉田焼などの器も取り入れる予定。さらにラウンジやサウナ、嬉野茶の体験なども用意されるという。

森の次は、滝へ。風の森で感じたGOTENリゾートらしい自然と建築の溶け合い方が、無名滝でどう進化するのか。佐賀の温泉リゾートは、まだまだ面白くなりそうだ。

奥武雄温泉 風の森 施設情報

施設名 奥武雄温泉 風の森
所在地 佐賀県武雄市西川登町小田志17275
特徴 2人専用の森の宿/全11棟の離れ/全室天然温泉露天風呂付き
サウナ 宿泊者限定の貸切サウナ「カガミノサウナ」
サウナ設備 寝サウナ/セルフロウリュ/METOSストーブ/森を望むガラス張りサウナ室
水風呂 バスタブ型水風呂/セルフ製氷器あり
外気浴 森に囲まれたウッドデッキ/インフィニティチェア
温泉 奥武雄温泉/ナトリウム炭酸水素塩泉/純重曹泉
客室 全室一棟離れ/天然温泉露天風呂・内湯付き
ラウンジ Slow Minutes/コーヒー・紅茶無料/有料アルコールあり
公式サイト https://www.oku-takeo.com/

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